大津市歴史博物館

お知らせ

日露戦争関係資料、歴史博物館に寄贈
過酷な戦争の模様を記録した「従軍日記」や戦地からの手紙など (2003.6.24)

概要

◆「日露戦争従軍日記」ほか関係資料を寄贈

日露戦争資料
上田長次郎氏

 このほど、大津市中庄の上田次栄(つぎえ)さんより、次栄さんの義父・上田長次郎氏が書き残した「征露戦役従軍日記」ほか日露戦争の関係遺品を一括、大津市歴史博物館に寄贈するとの申し出をいただき、歴史博物館で調査を行なった。一括資料のなかで、特に「従軍日記」(表紙・縦24cm、横16.8cm)及び戦地・満州(現中国東北部)から出された絵葉書や手紙には、兵隊たちが最前線で体験した過酷な戦闘の様子が生々しく記されている。今回の一括資料に含まれるものは、先の日記と手紙類のほか、長次郎氏の軍隊時代(歩兵第九連隊、兵営は別所=現御陵町)の肖像写真、日露戦争凱旋記念の朱塗りの盃、金鵄(きんし)勲章及び勲記など33件。
◆「従軍日記」ほか関係資料について

 長次郎氏は、明治12年(1879)神崎郡北五個荘村小幡(おばた、現五個荘町)に生まれ、同37年3月9日応召、陸軍歩兵第九連隊に編入され、4月満州に向けて出発、38年12月、大津に凱旋するまでの前線での体験を、丁寧な文字で罫紙72枚に綴っている(戦地でのメモをもとに凱旋後に清書したもの)。また、戦地から長次郎氏の実兄に出された手紙と絵葉書類は、長次郎氏の奥様・綾野さんが長く保管していたものを、昭和52年、綾野さん自身がノート(縦25.2cm、横17.8cm)に丁寧に貼り付けられたもの。内容は、戦況地図23点、写真5葉、封書21通、絵葉書7通からなっており、なかには、戦時中に「私年号」として使用された「征露」年号を記した絵葉書なども含まれている。

日露戦争資料
戦地からの葉書

 日露戦争の「従軍日記」は、すでに出版されたものが数冊あるが、これらは、小隊長や軍医、衛生兵といった人々の記録である。今回寄贈される日記の筆者は、従軍時は上等兵(後に伍長・軍曹と昇進)であり、戦場の記述には迫真性がある。従来の日記と合わせて読むと、従軍した軍人たちの戦場での有様(全体像)がよく分かり、日露戦争史の一端を補完する貴重な資料といえるだろう。これらの資料は、来月、7月23日(水)から始まるミニ企画展「大津・戦争・市民」において展示、公開する(会期は8月31日まで)とともに、ミニ企画展の関連講座(7月26日)によって詳しく紹介する。

◆従軍日記と手紙の内容

日露戦争資料

日露戦争資料

「征露戦役従軍日記」表紙と日記本文

 「従軍日記」の内容としては、筆者の長次郎氏が前線で赤痢にかかって苦しんでいたとき、現地の住人の親切により一夜の宿を提供されたが、用心のため銃剣を枕元に置いて眠ったこと、戦場に放置された敵軍の死体に犬が群がっている様子、また敵軍の負傷者の唸り声が夜間に聞え、敵ながら同情を覚えたこと(「敵ナク隣(隣人の意味か)ナリ」と表現)、極寒のなかで、金属に触れると手の皮がはがれ、ご飯も雪を食べているのと同じだと記されている。また戦地からの手紙には、補給路が断たれたことから物資が充分に届かず、一本の煙草を十三人で吸ったこと、極寒のなか、内地から届けられた毛布に感激したことなどが、綿々と記されており、その詳細な記述は、過酷な戦場で辛酸をなめた兵士の様子を、余すところなく伝えている。

ミニ企画展「大津・戦争・市民」
平成15年7月23日(水)から8月31日(日)まで
但し月曜日は休館
大津市歴史博物館常設展示室
観覧料 常設展示観覧券(一般個人210円)にてご入場いただけます。